【過去】2003年1月 〜森下社長がいなくなった時〜

まさかリングス日記で、森下社長の事を悼む日が来るなんて思いもしなかった。
本当におかしな心持ちでいる。
 
のび太のような顔をして、誰よりもそろばん勘定に長けた、クールな男。
格闘技が本当に好きかは甚だ怪しく、
もし業界が下火になったら、一足先に逃げ出してしまうような男。
そんな勝手なイメージで、僕は森下社長を見ていた。
 
それが合っていたのか、違っていたのかも、もう判らない。
 
彼のモチベーションがどこにあったのか
プライドをこの先、どうやって転がして行くつもりだったのか
おいしい商品に成長した所で、猪木や百瀬にいい様に持ってかれた事について
どう感じていたのか。
 
一度も、本音を聞かないままで、姿を消してしまった。
 
情け容赦のないやり方に、死ぬ程腹が立った事もあったけれど
結局僕は24回のプライド、全てを何らかの形で見てきた。
興奮して落胆して感動して、色々なものをもらった。
 
そして知っている。
プライドは森下社長が作り上げたものだ。
この後、誰かが、我が物顔でプライドを仕切りはじめるんだろうけれど、
それだけは忘れずに覚えていようと思う。
 
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自殺の本当の理由なんてわからないけれど
たぶん
高田の引退試合の達成感というのは、何かの遠因にあったんじゃないかなと想像する。
 
全ての出発点だった高田の素晴らしい引退試合を作り終えた後、
心に空白が産まれたんじゃないかと
本当に一方的な想像でしかないけれど。
 
そしてその先のプライドを明確にイメージできなかったんじゃないか。
 
あの日の満面の笑みの森下社長が頭を何回も去来する。
 
安らかに眠ってほしい。
そしてどこかから見ていてほしい。
格闘技はまだまだ先へ進むはずだから。